Twitterでの安易なつぶやきが、多くの人に残業を強いる

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先日、某飲料メーカーの製造した缶のポタージュが変色・腐敗しているというツイートが投稿され、騒ぎになりました。

この手の話題はここ数年で何度も起きており、3年前には即席めんメーカーの作ったやきそばにゴキブリが混入しているとのツイートが投稿され、製造停止に追い込まれる事態になりました。

投稿している本人たちは「面白半分」もしくは他の人への注意喚起として安易にやってるのかもしれませんが、投稿された側からすると大変な事態になります。たとえ無実であっても対応に追われ、当然残業も増えます。下手したら休日返上で対応しなくてはいけません。

このことは、ある程度社会経験を積んだ人なら誰でもわかるのですが、社会に出ていない・入社数年の人にはわかっていない人が多いと感じるので、元食品会社の社員として苦言を呈させてもらいます。

なお、今回のポタージュの件について、ツイート内容の真偽について議論するつもりはありません。真実だろうが嘘だろうが同じ話です(嘘なら最悪ですが)。また、以下の内容は今回のツイートに限らず、食品に対するクレームツイート全般に言ってることだと考えて下さい。

加えて、クレーム自体を批判するつもりもありません。異常な製品を買わされたのであればクレームを言うのは当然ですし、会社は徹夜でも休日出勤でも対応する責任と義務があります。クレームに真面目に対応しない会社が叩かれるのは当然です。

あくまで「原因が明確でない中で、必要以上に安易に拡散させるのはやめて欲しい」ということです。




なぜ安易なクレームツイートが無駄な残業を増やすのか

このような安易なSNSでの投稿が多くの人の残業を増やすことになるのでしょうか。

SNSで拡散されると関係のない人まで騒ぎ出す

SNSは言うまでも無く拡散性の高いメディアです。一人のツイートが多数リツイートやいいねされると物凄い勢いで広まっていきます。

そうなると、何の関係もない人まで企業に問い合わせを始めたりします。今回の件でもツイートのリプライなんかを見てると、直接被害を受けたわけでもないのに「メーカーに問い合わせた」と言ってる人がいます。

もちろんいつも買っていて不安になって問い合わせた人もいるでしょう。それ自体を否定することはできませんが、もし原因が拡散性のない場合(その製品のうち、特定の1個だけの問題だった場合ということ)や、嘘だった場合でも対応する側は必要以上の労力を払う必要があります。

もう一つ大変なのが、小売店や卸からの問い合わせです。

彼らがそのようなツイートを見てしまうと、当然自分の仕入れた商品が大丈夫か不安になります。そして一斉にメーカーに問い合わせをしてきます。そして、不安のある商品は売りたくないので、メーカーに安全証明を求めたり、同ロットの返品・交換を要求してきます。

彼らがそう思う気持ちも、もっともです。対応するメーカーだけでなく、そのような作業や不安を強いられる小売・卸も間接的な被害者でしょう。

このように無意味に拡散されてしまうと、問い合わせが殺到して現場の仕事が滞ったり、感じる必要のない人まで不安を感じたりすることになります。まったく不健全です。

 

不特定多数の人に無実の証明をするのは非常に困難

二つ目の理由が、無実の証明はとても困難ということです。

ツイッターで画像が拡散されてしまうと、たとえそれが虚偽であったとしても、メーカーは「無実であることの証明」をしなくてはいけなくなります。

今回のポタージュに関して、製造メーカーは発生から1週間ほどたった今でも製品回収を実施していません。

おそらくこれは、企業側で保管している同ロットのサンプルおよび在庫の検品や細菌検査等を行ったが、異常が見られなかったからでしょう。一個でも同様な状態の製品が見つかったら、おそらくその時点で回収に踏み切るはずです。回収をしないということは、「製品の製造及び安全性には問題がない」という判断ということです(これから回収となったら、それは遅すぎる)。

もうメーカー側では「(製造上は)問題なし」という結論が出ていると思うのですが、それをストレートに言っても、不特定多数に拡散されてしまった状態だと、さらに炎上させてしまう可能性もあり、簡単に結論づけられません。

そのため、明らかに無実の事象であっても、必要以上の調査や検査をしなければならなくなるのです。現場でやらされる人はたまったもんじゃありません。無実の証明というのは本当に大変なのです。

 

調査するのは最終製造メーカーだけじゃない

食品に限った話ではないですが、当然最終製造メーカーが原料からすべて生産しているわけではありません。

原料まで辿ると、サプライチェーンは広大です。

ポタージュの件は原料由来の可能性は低いですが、異物などの場合は原料メーカーへも調査依頼がいきます。原料メーカーは自社でその異物が混入する可能性の有無を調査し報告しなくてはいけません。

僕も原料メーカーの立場でしたが、このような依頼は毎週のようにありました。

調査するのは最終製造メーカーだけではないのです。特に異物などの場合、サプライチェーンを遡って多数のメーカーも調査する必要が出てきます。

クレームなので当然緊急です。今やってる仕事を返上してでも対応しなくてはなりません。休日でも関係ありません。

クレーム処理と言うのは、思っている以上に多数の人と労力が必要となるのです。安易な拡散で事態を必要以上に複雑化させるのは本当にやめて欲しいです。

 

拡散した本人もリスクを背負う

忘れてはいけないのが、拡散させた本人も責任を負うということです。

虚偽、勘違いで拡散させてしまった場合、損害賠償請求を起こされる可能性は当然あります。

これまで書いてきたように、SNSで食品の異常が拡散されてしまった場合、その対処には多くの人と時間がかかることになります。その損害を合計すると、とても個人で支払える金額ではなくなります。

現状では余程悪質でない限り、日本企業が損害賠償請求に踏み切る可能性は少ないと思います。

しかし、このような事態が増加するようであれば、そのうち損害賠償請求に踏み切る企業が出てくることも考えられます。実際、僕が担当しているメーカーでも、SNSで虚偽の拡散をされ損害賠償請求を検討している会社もありました(実際は行われなかったが)。

拡散する本人にも大きなリスクがあることは認識しておいた方がいいでしょう。



結論:安易な拡散はやめよう

誤解が無いよう繰り返しますが、僕はクレームを言うなと言いたいのではありません。買った製品がおかしければ問い合わせをしたり、クレームを言ったりするのは当然の権利だし、メーカーはそれに対応する義務を負っています。

また、今回のポタージュの件のツイートが虚偽だと言いたい訳ではありません。製造上で問題がなくても、配送途中や保管(今回の場合はコンビニの保温管理)によって異常が発生する可能性は当然あります。

しかし、原因もわからないうちに、SNSでさも大問題のように安易に拡散させてしまうことが問題だと言いたいのです。本人はいいことをしたつもりかもしれませんが、見えないところで多くの人が大変な思いをしています。

自分で原因判断なんてできる訳ないのだから、まずは販売店かメーカーにクレームを入れましょう。

また、そのようなツイートを安易に拡散させたり、製造現場や製品のことも分からないのに知ったかぶって的外れな推測を書き込むのもやめましょう。はっきり言ってツイッターでつぶやかれているそのような推測は、ほとんど的外れです。

「社畜嫌だ」だの「ブラック企業死ね」だの「サービス残業撲滅」だの主張するのであれば、このような行動は真っ先に謹んで欲しいと思います。それがブラック労働の原因になっているのですから。