書評『会社に人生を預けるな』勝間和代

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前回、新卒1年目で大企業をやめるのはあり?なし?という記事を書きました。新入社員に限らず、「この会社に人生を預けてもいいものか?」「でも安定した会社だから辞めるのはもったいない。。」と悩んでいる人も多いと思います。

今回はそんな人に是非読んで欲しい本を紹介します。

勝間和代さんの「会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)」です。

著者について

勝間さんの肩書は「経済評論家」とありますが内閣府男女共同参画会議議員や「ワークライフバランスに関する専門調査会」専門委員、そしてプロ雀士までジャンルをまたいで多数の活動をされている方です。元々は会計士としてキャリアをスタートされたようです。

2000年代後半からは著作活動を積極的に行い、多数のビジネス本を執筆。断る力 (文春新書)お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)などはベストセラーとなりました。彼女の生き方に感化された人達は「カツマー」と呼ばれ、当時はテレビで見かけない日は無いくらい影響力のある方でしたが、最近はめっきり露出が減ってますね。

21歳で出産し3女の母でバツ2というなかなか出入りの激しい人生を送っておられます。

wikipedia-勝間和代

「会社に人生を預けるな」

この本のメッセージは「リスク・リテラシーを磨こう」ということです。

日本人はリスクと言えば「危険」とイコールだと考える人が多いのですが、実際にはリスクはリターンと表裏一体のものであり不確実性の尺度というのが正しい姿です。

銀行預金と株式投資の例を考えればわかりやすいでしょう。

銀行預金は基本的に元本保証ですが金利はほとんど無し。ローリスク・ローリターンです。

逆に株式投資は購入価額を割り込むことはありますが、配当の利回りは銀行預金よりも高く、大幅な値上がり益を得られる可能性があります。銀行預金と比較するとハイリスク・ハイリターンです。

株式の投資でどれだけの収益を上げられるか(もしくは損失を被るか)は株価や配当利回りがどれくらい変動するかによります。この変動幅(ボラティリティ)がすなわちリスクです。

リスク(ボラティリティ)の大きさによってリターンも変わってきます。そしてリスクがないということは価値の変動がないということなのでリターンはありません。

勝間さんはこの本の目的をこう書いています。

すなわち、リスクとリターンは表裏一体であるため、どのような適切なリスクを取れば、それに見合ったリターンが得られる可能性があるのかを常に評価し、判断し、より適切な管理方法の継続を習慣化するのです。このつながりを、単に概念としてだけではなく、腹に落ちるまで理解していただくことが本書の目的です。

『会社に人生を預けるな―リスク・リテラシーを磨く』勝間和代 P14

みんな気が付かずに多大なリスクを取っている可能性がある

本書で勝間さんは、現代日本での大きな問題は「終身雇用制」だと主張しています。

現代は「適度なリスクを取らないことに対してのリスクの方が、逆に全体のリスクを高めている」時代だと私は感じています。そして、そのことを典型的に示しているのが終身雇用制です。

(中略)

その40年も持たないビジネスモデルに私たちの大事な人生を預けてしまったが最後、その企業内でのリスク変動のみに振り回され、結果的に全体のリスクをより高めてしまうことになります。

『会社に人生を預けるな―リスク・リテラシーを磨く』勝間和代 P24

卵を一つの篭に盛るなという投資の格言があります。

卵を一つの篭に盛ってしまうと、篭がひっくり返った時に全部だめになってしまう。非常にリスクの高い状態です。

つまり、危機は分散しましょう(一点投資はやめましょう)ということです。

日本では今でも、いい会社に入ってそのまま最後まで勤め上げるのがリスクの低い生き方と考える人が多数派でしょう。

しかし、実際は一つの会社での環境に最適化してしまうと、もしその会社が危機に陥っても逃げ出すことが困難になります。

これが「卵を一つの篭に盛った状態」です。

よく業績が悪化した会社はできる人から辞めていくと言います。一つの会社に最適化することをリスクと捉え、他でも通用するスキルや能力を磨いてきた人は、自由に移動することができるからです。

逆にリスクを認識できず、安定に胡坐をかいていた人は沈み行く泥船にしがみ付くしかありません。

大企業に入って安心している人は、知らず知らず過度なリスクを取ってしまっているのです。

様々な労働問題も「終身雇用制」と「解雇規制」が問題

勝間さんは長時間労働やサービス残業などの労働問題、食品偽装・クレーム隠し等の不祥事も終身雇用制に問題があると言います。

終身雇用制があるので従業員は会社との関係が悪化するのを恐れ、残業代が支払われなくてもサービス残業等の滅私奉公をしようとします。

また企業側も一度雇った正社員を簡単に解雇できないため、仕事量が増えても新たに人を雇わず、今いる人員だけで対処しようとするため、長時間労働が常態化してしまいます。

クレーム隠し等の不祥事が起こるのも、従業員にとって自分が定年まで勤め上げるはずの会社が無くなっては困るので、不都合なことを隠そうとするインセンティブが働くことが原因としています。

この意見には同意するしかありません。

終身雇用制がある限り、ブラック企業は無くならないと僕は思います。

僕はこの本で勇気づけられた

僕が初めてこの本を読んだのは2010年頃だったと思うのですが、当時30を目前にしていろいろとモヤモヤしていた僕はこの本にとても勇気づけられました。

当時の僕は会社員生活を続けることに疑問を抱き始めていました。

会社は安定しているし、仕事にも慣れてルーティン的にこなせるようになっていたのですが、「自分はこのままでいいのか」という疑問に毎日取り憑かれていました。

周囲に相談しても「こんな安定した会社やめるの勿体ないよ。」とか「楽に仕事できるんだから定年まで居座ればいいんだよ。」とか言われるだけ。そう言われる度に何か納得した気になって「会社をやめる」という選択肢自体を自分の中から消し去っていました。

そんな時、ふと目についたこの本を読んでみました。「これこそ俺のモヤモヤを表現してくれた本だ!」と読了後感じました。

それから会社を辞める事を現実的な選択肢として考えるようになり、辞めた後のリスクヘッジ策を考え始めました。

今でも色あせない内容

この本は2009年出版と少し古い本ですが、今でも内容は古ぼけていません。それだけ日本社会が変わっていないということなのかもしれませんね。

当時と比べると今は、会社員の安定は絶対的ではないという考えも認識されてきており、多様な生き方も選べるような社会になりつつあるとは思います。

しかしながら、伝統的な「終身雇用制度」の中にいるほうが安全なのではないかという考えを持つ人の方が、まだ多数なのではないでしょうか。

そんな方には、この文章をよく読んで欲しいと思います。

やはり、まず一番大切なことは、リスクに対して、誰がその責任を負うべきなのかについて、考え方や発想を変えることです。(中略)すなわち、リスクは極力避けるべきものではなく、上手に把握し、場合によっては果敢にリスクを取ることで、将来が開けるのだという発想です。

自分の人生を会社に預けないということもしかり、国に頼りすぎないということもしかりです。自分の人生は自分でコントロールするという発想が大事です。

『会社に人生を預けるな―リスク・リテラシーを磨く』勝間和代 P14

会社を辞めるのも残るのにもリスクはあります。ゼロリスクはありません。

そのリスクを把握し、どちらのリスクを取るべきなのか、自分でよく考えなくてはいけません。

リスクを上手くコントロールできれば、成功する確率は高くなるはずです。

是非、この本を読んでリスクとの付き合い方を学んで欲しいと思います。

それでは。

勉強法や仕事効率化の本もおすすめです。